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小規模事業者が職業能力開発基準を活用して人事評価制度を構築する!

(2024/9/3)


 先月は『人事評価制度で人材を育成する!』というテーマでした。今回は小規模事業者が厚生労働省の提供する職業能力開発基準を活用して、人事評価制度を構築する方法について解説します。

 人手不足により限られた人材を効果的に活用することが企業の成長にとってますます重要になっています。人事評価制度を導入することで社員のスキルや業績を公正に評価し、適切なフィードバックを行うことで社員の成長を促進し、モチベーションの向上を目的に人事評価制度の導入を検討している小規模事業者が増えてきています。

 人事評価制度の導入を検討している小規模事業者はこの職業能力開発基準を参考にしてみてはいかがでしょうか?


1. 職業能力開発基準とは                   

 厚生労働省の職業能力開発基準は職務に必要なスキルや知識を体系化したものであり、これには各スキルのレベル区分も含まれています。小規模事業者が人事評価制度を構築する際にはまずこの基準を理解し、自社の業務内容や職務に適した基準を選定することが重要です。

 基準には業種や職種ごとに具体的な能力要件が示されており、さらにスキルごとに「レベル1」「レベル2」といったレベル区分(役割等級)が示されています。これにより自社のニーズに合った基準を選び、社員に求めるスキルとその達成レベルを明確にすることができます。

 「スキルの見える化」についてはキャリアマップの活用をお勧めします。
 キャリアマップは各職務におけるキャリアパスを示したもので、社員が将来的にどのようなスキルを習得し、どのレベルに達することでどのような役職に就くことができるかを可視化します。これにより社員のモチベーション向上にも寄与します。


参考)厚生労働省「職業能力評価基準」について
<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/ability_skill/syokunou/index.html
>

2. 職業能力基準を基にした評価項目の設定           

 職業能力開発基準に基づき、社員の能力を評価するための具体的な評価項目を職業能力評価シートで設定します。このシートも職種・レベル区分ごとに用意されています。

 例えば、「改善活動による問題解決」「関係者との連携による業務の遂行」など各社員の職務やレベルに応じた評価項目を設け、それぞれの項目に対して具体的な達成基準を設定します。

【職業能力評価シート】

3. 評価プロセスの設計                    

 職業能力開発基準を基にした評価項目に対してどのように評価を行うかを具体的に決定する必要があります。
 評価項目に対して、自己評価、上司評価、同僚評価など評価方法を組み合わせることで、評価の客観性と信頼性を高めることができます。

 また、その運用においては四半期ごとに評価を実施するか、半期に一度行うなど評価サイクルを決めましょう。

 さらに評価後のフィードバックプロセスも明確にする必要があります。誰がフィードバックを行い、どのように社員に伝えるかを決めておくことで、評価結果に基づいた能力開発を効果的に行うことができます。


4. フィードバックと能力開発                 

 評価結果を基に社員に対してフィードバックを行い、今後の能力開発の方向性を示します。職業能力開発基準に基づいたフィードバックを通じて、社員がどのスキルを向上させるべきか、どのように成長していくべきかを具体的に示すことができます。

 また、キャリアマップを利用することで社員の成長目標を明確にし、スキルアップの道筋を具体的に示すことができます。さらに能力開発のための研修や教育プログラムを設け、社員のスキルアップを支援することが長期的な人材育成に繋がります。

5. 評価制度の見直しと改善                  

 導入後も定期的に見直しを行い改善を図ることが必要です。特に、小規模事業者では経営環境や業務内容の変化に応じて評価基準や項目を柔軟に見直すことが重要です。
 社員からの意見も積極的に取り入れ制度の改善に役立てることで、評価制度の信頼性と効果を高めることができます。キャリアマップを使って社員の成長や業務内容の変化を反映し、評価基準や項目を見直すことが可能です。


6. 賃金制度との連携                     

 評価制度を賃金制度と連携させることで評価制度の重要性を社員に認識させるとともに、モチベーションの向上を図ることができます。職業能力開発基準に基づいた評価が報酬に結びつくことで、社員は自分の成長が企業の業績に貢献していることを実感しやすくなります。

 ただし最初から賃金制度と連携させるのではなく、まずは評価を行うことや評価を受けることに慣れる期間を設け、その後に評価制度と賃金制度を連動させるという方法でも良いでしょう。


7.まとめ                          

 小規模事業者が人事評価制度を構築する際には、厚生労働省の職業能力開発基準を活用することが有効です。なぜなら、職務に必要なスキルや知識が体系化され具体的な能力要件やレベル区分が示されており、これに基づいて評価項目を設定できるからです。

 さらに、自己評価や上司評価を通じてスキルや能力の認識を共有し、キャリアマップを活用して社員の成長目標を明確化し、フィードバックを通じて能力開発を支援することが社員のモチベーション向上につながります。

 小規模事業者は人手不足により採用が困難になっている今こそ、人材育成の観点から職業能力開発基準を活用して、人事評価制度の構築に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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