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(2023年12月15日)
日々の電子取引についてデータ保存を義務とする法律が令和4年1月1日に施行され2年の宥恕期間が設けられましたが、その宥恕期間が令和5年12月31日に終了し令和6年1月1日より本格的な施行開始となります。
このコラムでは電子帳簿保存法について、どんな内容か、どういった対応をするものなのか、簡単にご説明します。
・電子帳簿保存法の内容
電子帳簿保存法とは、各税法で保存が義務付けられている帳簿・書類を電子データで保存するためのルール等を定めた法律です。
その保存について、以下の3種類に区分しています。
(画像引用:国税庁パンフレット「令和5年度改正 電子帳簿保存法 YouTube動画「国税庁動画チャンネル」(令和5年8月更新)掲載資料 p.4」. (2023年12月5日参照))
< https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023007-095.pdf>.
①電子帳簿等保存【希望者のみ】
②スキャナ保存【希望者のみ】
この2点については、「紙保存していたものを電子データ保存に変えても良い」といった内容で、強制ではありません。
①、②の対象となる帳簿・書類は以下の通りです。
③電子取引データ保存【法人・個人事業者は対応が必要です】
一方でこちらについては「電子上で注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データのやり取りをした場合は、その電子取引データを保存しなければならない」という内容です。つまり新たに義務となる項目になります。
③の対象となる書類は以下のように、インターネット上で受領・交付を行った場合の請求書や納品書、クレジットカード等の利用明細データなどとなります。
・電子帳簿保存法に向けての対応
まず、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引データ保存、それぞれの保存を行う際のルールが設けられています。ルールをまとめたパンフレットを国税庁が発行しておりますので、そちらを一部引用致します。
①電子帳簿等保存
(画像引用:国税庁パンフレット「電子帳簿保存法 はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存」(令和6年1月以降用)p.2.< https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_02.pdf>.(2023年12月5日参照))
②スキャナ保存
(画像引用:国税庁パンフレット「電子帳簿保存法 はじめませんか、書類のスキャナ保存」(令和6年1月以降用)p.2.< https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_03.pdf>.(2023年12月5日参照))
③電子取引データ保存
(画像引用:国税庁パンフレット「電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください」(令和6年1月以降用)p.3.< https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_01.pdf>.(2023年12月5日参照))
システム面では以下の点にご注意下さい。
■改ざん防止のための措置
訂正・削除の事実が残るものやその内容を確認できるもの、タイムスタンプを付与できるもの
■求めに応じて速やかに出力できるための機能
・検索機能の確保:取引年月日や取引金額、取引先での検索が可能
例):ファイル名を『2023.12.12_〇〇〇株式会社 _500,000.pdf』(日付_取引先名_金額.保存形式)にして保存、または表計算ソフト等を用いて索引簿を作成する。
・システムマニュアルの作成:そのシステムについての概要書や操作説明書、保存手順や担当部署などを明らかにした書類の備え付け
■(②スキャナ保存のみ)解像度200dpi以上かつ256階調(24ビットカラー)以上で読み取ることができるもの
電子帳簿保存法に対応したシステムは公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)にて承認を受けたものがまとめられておりますので、こちらをご確認ください。
・JIIMA認証情報リスト
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/11.htm
なお③電子取引データ保存について以下に該当する場合、上記『・検索機能の確保』が不要となります。
〇令和4年1月1日から令和5年12月31日までの電子取引
基準期間(個人事業者の場合は前々年の1月1日から12月31日まで、法人の場合は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の個人事業者・法人事業者で、税務職員から電子取引データのダウンロードを求められた際に応じることができる場合
〇令和6年1月1日からの電子取引
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の個人事業者・法人事業者、または「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先毎に整理された状態で提示・提出できるようにしている個人事業者・法人事業者で、税務職員から電子取引データのダウンロードを求められた際に応じることができる場合
その他、①電子帳簿等保存と②スキャナ保存については電子化した帳簿・書類は他の帳簿との関連性を確認できるようにすることと、②スキャナ保存のみ保存までの期間制限が設けられている点にご注意ください。
電子帳簿保存法は令和6年1月1日に施行されます。
①電子帳簿等保存と②スキャナ保存については任意ですが、③電子取引データ保存は義務となります。
新たな猶予措置として以下の2点を満たしている場合は保存時に満たすべき要件への対応が不要となりますが、使用されているシステムや事務処理規定などが電子帳簿保存法の要件を満たすものあるか改めてご確認ください。
〇猶予措置の要件
・保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署?が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要です。)
・税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求め及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
(2023年8月15日)
インボイス保存不要(少額特例)
【概要】事務負担を軽減する目的で少額(税込1万円未満)の課税仕入については、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
【対象者】①基準期間(*1)における課税売上高1億円以下の事業者
②特定課税期間(*2)における課税売上高5,000万円以下の事業者
上記①・②のいずれかに該当する事業者
【適用期間】6年間(令和5年10月1日~令和11年9月30日)
【対象となる取引】国内にて行う課税仕入
【1万円未満の判定基準】1回ごとの取引(*3・4)税込金額で判断
(*1)「基準期間」とは、個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。
(*2)「特定期間」とは、個人事業者については前年1月から6月までの期間をいい、法人については前事業年度の開始の日以後6月の期間をいいます。
(*3)複数の商品を1度の取引で購入する場合は、その総額で判断します。取引ごとに納品書や請求書等といった書類が交付されるので、そのような書類をもとに取引金額を判断してください。
(*4)役務の提供の場合、通常の約した役務の取引金額で判断いたします。
続いて1万円未満の取引の判定基準を見ていきます。
(例)
①7,000円の商品を10月5日に購入、4,000円の商品を10月20日に購入し、それぞれで請求している場合
→それぞれの取引が1万円未満の取引に該当するため、本経過措置の対象
②7,000円の商品と4,000円の商品を10月20日に同時に購入する場合
→1回の取引が1万円を超えるため、本経過措置の対象外
最後にこの特例での気を付けるべきポイントを紹介します。
【気を付けるポイント】
①
新たに設立した法人における基準期間のない課税期間については、特定期間の課税売上高が5,000万円超となった場合であっても、当該課税期間については、本経過措置の適用が可能です。
②
適格請求書発行事業者以外の事業者からの課税仕入れであっても、課税仕入に係る支払対価の額が税込1万円未満である場合には本経過措置の対象となります。
以上がインボイス保存不要(少額特例)の説明となります。インボイス制度が始まる前に今一度取引を確認しておきましょう。また、国税庁「インボイス制度に関するQ&A目次一覧」や財務省「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」(令和5年3月31日時点)にて随時インボイスの情報が更新されているため参考にしていただければ幸いです。
・国税庁「インボイス制度に関するQ&A目次一覧」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_invoice_mokuji.htm
・財務省「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」(令和5年3月31日時点)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/qa_futankeigen.pdf
(2023年5月25日)
令和4年12月23日に、令和5年度税制改正大綱が公開されました。
数ある改正内容の中にインボイス制度に関する内容も含まれています。
その中で、今回はいわゆる『2割特例』について解説を行おうと思います。
2割特例について
こちらは小規模事業者へ向けた負担軽減措置となっており、それまで免税事業者であった事業者が令和5年10月1日からインボイス発行事業者へ変更した場合、消費税の納付税額がその事業年度の課税売上税額の2割に軽減することが出来ます。
抑えるべきポイントは以下の通りです。
順を追って解説をしていきます。
まず、このいわゆる『2割特例』は納税者が負担することとなる消費税額を、およそ3年間課税売上税額の2割で良いとする特例です。
特に注目すべき内容は、消費税の納税額が課税売上高の2割で良いという点と課税売上高についての税額計算のみで良いという点です。
通常消費税の納税額の計算において売上と仕入の2つの計算が必要となりますが、この特例では売上のみの計算で良いため、事務負担はかなり軽くなります。
次に、申告の際、今までの納税額の計算方法にこの『2割特例』が追加されるかたちになりますが、消費税の還付を受けられる事業者や簡易課税方式を選択し第1種事業(卸売業)に相当する事業者以外は2割特例を選択する方が税負担が軽くなると考えられます。
『2割特例』を受けるかどうかは消費税の申告のたびに任意選択できますので、事前に有利となる納税額の計算方法についてシミュレーションを行うことをお勧めします。
そして、この特例の対象期間は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間となっておりますが、例えば1月~12月が計算期間である事業者は令和8年12月31日に終了する課税期間までが対象期間になります。
なお、以下のような場合は、この特例の対象外となります。
②については、例えば基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合や基準期間がない事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である法人(新設法人)である場合、課税事業者選択届出書を提出した場合や高額資産を取得して仕入税額控除を行った場合などが挙げられます。
②に関連して、令和5年10月1日以前に課税事業者選択届出書を提出し課税事業者となってしまう場合は、その課税期間が終了するまでに課税事業者選択不適用届出書を提出することで事前に効力が発生していた課税事業者選択届出書を失効できることとされています。
勿論インボイス発行事業者登録とは関係なく課税事業者となる場合を除きますが、予め課税事業者選択届出書を提出していた場合でも上記の手続きを行えば『2割特例』を受けられる場合があります。
以上が令和5年税制改正大綱にて公開された『2割特例』についての概要となります。
多くの小規模事業者にとってこの特例は事務負担と税負担の軽減に繋がるものになりますので、今一度この特例を受けることが出来るのか確認を行い、インボイス制度に向けて準備を進めましょう。
(2023年4月20日)
インボイス制度において、一定の事項を記載した「帳簿」及び適格請求書発行事業者が交付する「適格請求書」などの請求書等の保存が仕入税額控除の要件ですが、請求書等の交付を受けることが困難である等の理由により、一定の事項(※1)を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例が設けられています。図1は国税庁で発表されている帳簿のみの保存が認められる取引です。今回は図1内の出張旅費の取り扱い(図1①②⑨)に限定して説明していこうと思います。
図1
出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-13.pdf
※1一定の事項・・・①課税仕入れの相手方の氏名又は名称、②課税仕入れを行った年月日、③課税仕入れに係る資産又は役務の内容④課税仕入れに係る対価の額⑤帳簿のみの保存が認められる取引に該当する旨
従業員等の出張旅費を事業者が負担する場合、切符代や宿泊代等については、事業者側が誰と決済するかによって適用できる特例が異なります。
【事業者側が事業者等と直接決済する場合】
事業者側が業者と直接決済する場合、金額が3万円未満であれば【図1】①の特例(=公共交通機関特例)が適用され、支払金額が3万円以上の場合は条件を満たすことで【図1】②(=回収入場券特例)の特例が認められます。
例1)
事業者が、従業員の出張に必要な新幹線の切符(2万円)を事前に購入した場合、決済相手が鉄道事業者でかつ、金額も3万円未満であることから、【図1】①の特例を適用して帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けることができます。ただしホテル等の宿泊代つきましては金額に関わらず適用されませんのでご注意ください。
例2)
新幹線の切符代が3万円以上となった場合、【図1】②の特例の適用が可能です。ただし適用できるのは、入場券等が改札機等に回収されてしまい手元に残らないケースに限定されます。
【事業者側が従業員と決済する場合】
事業者側が従業員等と決済をする場合は【図1】⑨の特例(=出張旅費特例)が適用されます。この特例では、通常必要とされる範囲であれば金額・名目に関わらず帳簿のみの保存で仕入れ税額控除を受けることが出来ます。
例3)
従業員が出張先で利用した新幹線の切符(3万5千円)と、ホテルの宿泊代(1万円)を、出張後に事業者と精算する場合を想定します。いずれについても事業者側が従業員等と決済するという点から、新幹線の切符代が3万円以上であっても、【図1】⑨の特例が適用されます。また、事業者側が業者等と直接決済する際には認められなかったホテル等の宿泊代につきましても帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けることができます。ただし【図1】⑨の特例に金額の上限は設けられていませんが、その出張に際して通常必要と認められる範囲内でなければなりません。また、従業員が保有する法人カードで決済した場合は【図1】⑨の特例には該当せず、決済先から交付されるインボイスの保存が必要となるためご注意ください。
以上がインボイス制度における出張旅費の取り扱いとなります。
交通機関ごとにインボイスへの対応の仕方が異なりますので、随時確認するようにしましょう。
税務・労務・経営に関する事でお困りの方はこちらのお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合わせください。
(2022年11月28日)
令和4年10月11日より全国旅行支援が開始したことで「息抜きに旅行でもどうだろうか」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
会社では出張旅費に充てるものとして使われる場合もあるかと思います。
今回はこの制度に関わる税金についてまとめていきます。
【要点】
・個人の方は割引額・クーポン券額が一時所得の対象となり、一時所得は50万円を超えなければ課税されない
・一般的な給与所得者は給与以外の所得金額が20万円以下であれば確定申告をする必要はない
・法人は原則として割引前の金額で経費計上をし、役員・従業員の方へ割引後の金額で精算した場合は割引額が雑収入となる
【基本的にGoToトラベルと同じ課税関係】
以前に新型コロナウイルス感染症の経済対策として『GoToトラベル』・『GoToイート』が行われましたが、全国旅行支援制度も同じ課税関係となります。
『個人・法人』の2つに分けてまとめていきます。
[個人]
個人の方でキャンペーン対象の旅行商品を購入した場合は、国から補助される旅行代金の割引額やクーポン券額は一時所得の対象となります。
この一時所得に関する収益の計上時期については、以下の通りです。
・旅行代金の割引額 ➡ 旅行代金相当額の充当後の額の支払い完了時(=旅行終了時)
・クーポン券 ➡ 使用した時
なお、一時所得は特別控除として50万円が控除されますので、その年の一時所得合計が50万円を超えなければ所得税が発生することはありません。
※控除:課税対象額を減らす
▽ 一時所得の課税所得金額=(一時所得に関する収入金額-そのためにかかった経費-特別控除50万円)×1/2
また、会社に勤めている方が個人的にキャンペーンを利用した際、基本的には以下の3つの要件全てに当てはまる場合は給与所得と退職所得を除いた所得が20万円以下であれば課税されません。
<3つの要件> |
・収入は1か所の勤務先から支給される給与のみ ・その給与収入は2,000万円以下 |
役員・従業員が出張でこのキャンペーンを利用した場合ですが、法人が旅費として経費計上する金額は割引前の金額となります。
理由としては「旅行会社が旅行代金を値引きしたわけではない」からです。経理処理は以下の2パターンあります。
例) 割引前金額:25,000円 割引額:8,000円 |
1 法人から役員・従業員へ割引前の25,000円で精算した場合 旅費交通費 25,000円 / 現預金 25,000円
2 法人から役員・従業員へ割引後の17,000円で精算した場合 旅費交通費 25,000円 / 現預金 17,000円 雑収入 8,000円 (消費税対象外) |
取引先の手土産代としてクーポン券を利用した場合も同様の扱いとなります。
収益の計上時期は、個人の方の場合と同様のタイミングです。
全国旅行支援については以上が要点になります。
効果的にこのキャンペーンを利用しましょう。
(2020年2月3日)
インボイスとは
令和5年10月1日よりインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されます。インボイス(適格請求書)とは、売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるものであり、所定の記載要件を満たした書類やデータのことを言います。
インボイス制度下で求められること
インボイス制度では、現行の区分記載請求書保存方式に加えて以下の記載が必要です。
① 「課税事業者の登録番号」
② 「税率ごとに区分して合計した適用税率」
③
「税率ごとに区分して合計した消費税額等」
以上の追加項目の中で注目すべきポイントは①「課税事業者の登録番号」です。この番号を発行するためには適格請求書発行事業者になる必要があるのですが、適格請求書発行事業者はどの事業者でもなれるという訳ではありません。
適格請求書発行事業者になるには課税事業者である必要があり、令和5年10月1日からインボイスの発行を開始する事業者は令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。
インボイス制度開始後、「買手側」の対応として売手に対してインボイスの発行を求め、受け取ったインボイスを適切に保存しなければなりません。反対に「売手側」の対応として買手からインボイスの発行を求められた際には、求めに応じて交付する義務があります。
この場合、小売りや飲食店、タクシー等、不特定多数のお客様に対して行う取引では、インボイスに代えて、お客様の氏名又は名称を省略でき、適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等のいずれかの記載があればよい、簡易インボイス(適格簡易請求書)の交付も認められています。
出典:国税庁ホームページより.(インボイス制度の概要|国税庁 (nta.go.jp))
インボイスにおける影響
インボイス制度開始に伴い大きな影響を受けるものの一つに消費税の仕入税額控除があります。
現行の制度では、仕入先が課税事業者か免税事業者かにかかわらず、全ての課税仕入れに対して一律に消費税が課税されているものとして仕入税額控除を行っております。そのため、仕入先の免税事業者は預かった消費税を納めていないにもかかわらず、仕入税額控除の対象としていることから国に納めるべき消費税が過少になっているのではないかという制度上の問題がありました。
そこで令和5年10月1日から開始される制度がインボイス制度です。
消費税の仕入税額控除を受ける要件としてインボイスの保存が必要になります。そのためインボイスを発行しない事業者との取引に関しては仕入税額控除が適用されないため注意が必要です。
そこで現時点で免税事業者の方は選択を迫られることとなります。
主に一般消費者を対象に商品の販売やサービスの提供をしている場合は、お客様がインボイスを必要とする機会が少ないためインボイス制度の影響をほとんど受けないと考えられます。また、免税事業者との取引が中心の場合も、これまでに免税事業者であった方が新たに課税事業者にならない限り、ほとんど影響を受けないでしょう。
しかし、課税事業者が中心的なお客様である場合は大きな影響があると思われます。取引先の課税事業者は売手側が発行したインボイスがないと消費税の仕入税額控除ができず、控除できない分の消費税を負担することとなるからです。
そのため、免税事業者は課税事業者になることを選択し、適格請求書発行事業者に登録することも一考を要します。しかし、課税事業者になると、経理上の手間や消費税の申告納税義務も生じます。
経過措置の活用
なお、インボイス制度における課税仕入につきましては、インボイスがなくても以下の経過措置が設けられます。
期 間 | 割 合 |
---|---|
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで | 仕入税額相当額の80% |
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで | 仕入税額相当額の50% |
出典:国税庁ホームページより.(インボイス制度の概要|国税庁 (nta.go.jp))
そのため、課税事業者となるべきか判断に迷われた場合は、取引先の状況等を見ながら顧問税理士の方と相談するなどをして検討されるのがよろしいかと存じます。
2022年1月5日 12:00
2021年12月10日、自由民主党による令和4年度税制改正大綱が公表されました。その中で注目を集めたものの一つが、2022年1月より施行される電子帳簿保存法の猶予規定についてです。
現行の規定では帳簿書類や取引関係書類はすべて紙で保管することが原則となっています。しかし、日本政府がデジタル化を推進する中で、電子取引に関する書類(メールで送られた請求書など)についてはデータのまま保存するように求められたのが電子帳簿保存法です。ただ、電子取引については紙での保存を一切認めず、ストレージサービス等の利用を前提としているような厳格で煩雑な要件が求められる一方で、要件を満たしていないと青色申告取り消しの可能性が取り沙汰されるなど、その運用について非常に不安視されていました。
幸い、要件不足によってすぐ青色申告の取り消しにはならないというQ&Aが発表されましたが、改正に対応する十分な時間を確保できないという声が多かったこともあり、令和5年12月31日までの2年間はデータ保存とあわせて紙での保存も認められるようになる見通しです。(ただし、保存要件を満たすことができないやむを得ない事情があると認められ、税務調査時に出力書面による提示が求められるなど一定の要件はあります。)
この騒ぎの中で、あえて紙ベースの取引に戻って電子取引をなくそうという動きが一部で見られました。例えば、アマゾンなど紙の請求書が発行されないインターネット取引をやめ、紙の請求書が発行される別の事業者から購入するというものです。確かに、法律に対応するためだけの余計な手間を省き、本業に集中するという意味ではあながち間違った方法とは言えません。しかし、電子帳簿保存法の改正をデジタル化という大きな流れの中でとらえると、紙への回帰はいわばその場しのぎであり、最善の方法ではないと考えます。電子帳簿保存法の改正は電子取引データの保存に焦点があたりがちですが、スキャナ保存の要件は逆に緩和されており、うまく運用できればほとんど全ての書類をデータで保存することも可能になります。膨大な書類の山を7年間(青色欠損金額等が生じた事業年度については10年間)も保存するためのスペースを確保する必要もなくなるのです。過渡期であるがゆえに逆に不便に感じる点もあるかと思いますが、これを電子化による業務効率化のチャンスと捉え、業務フローを見直すことで業績の改善につなげていきましょう。
(2022/1/5 K.Y)
2020年2月3日 12:00
平成27年の相続税法改正により、基礎控除額が引き下げられました。
その結果、相続税の申告件数は改正前よりも増加しています。
相続税申告が行われた場合、そのうちの3割程度で税務調査が実施されているそうです。
更に、相続税の税務調査が行われた場合、そのうちの約8割で申告漏れ等の指摘がなされるとのこと。
そこで今回は、相続税の税務調査で申告漏れの指摘を受けやすい論点である「名義預金」についてポイントをお伝えします。
1.名義預金とは?
名義預金とは、
形式的には被相続人の配偶者や子などの親族名義になっている預金であるが、
実質的には被相続人のものであり、単に親族等の名前を借りているにすぎない預金のことです。
2.名義預金の相続税申告における取り扱い
相続税の申告においては、その財産が被相続人のものであるか否かを形式ではなく実質で判断する必要があります。
そのため、仮に被相続人以外の親族名義の預金であっても、実質的に被相続人の財産であると判断される場合には、相続税申告の対象に含める必要があります。
3.名義預金か否かの判断基準
名義預金か否かについては、以下のような判断要素を基に総合的に判断されます。
・その預金の資金源は誰のものか
・その預金の管理・運用は誰が行っているか
・当事者間での贈与の有無
・その預金から生じる利益は誰に帰属しているか
・被相続人とその預金の名義人、管理・運用者との関係
・その預金がその名義人の名義となった経緯
4.へそくりについて
専業主婦が、夫から生活費として渡された金銭の余剰分を貯蓄した場合(いわゆるへそくり)、
その財産は夫婦の共同生活の基金と考えられ、被相続人である夫の財産として扱われますので、こちらも留意が必要です。
5.名義預金であるとの指摘を受けないための事前の対策
親族間で贈与された財産であることを主張するのであれば、上記の判断基準に照らし、少なくとも以下のような対策をとることをご検討なさってはいかがでしょうか。
・親族間の贈与であっても、贈与契約の書面を交わす(贈与の都度)。
・預金口座の管理・運用に必要な通帳、証書、登録印、キャッシュカードなどを名義人が所持する。
なお、株式や投資信託なども名義財産であるとの指摘を受ける可能性がありますので、名義預金同様にご留意いただく必要があります。
(2020/2/3 T.K)
2020年2月3日 12:00
1.消費税 課税事業者/免税事業者
期首資本金の額が1千万円以上の法人は、設立初年度から課税事業者となります。
免税事業者を選択できません。
資本金の額を決定する際に考慮してください。
2.「青色申告書の承認の申請書」の期限内提出
法人設立初年度の届出期限は、設立後3か月以内です。
期限内に提出しないと、設立初年度は白色申告となります。
白色申告の場合、青色申告の特典を受けられません。
青色申告の特典例:青色欠損金の繰越控除、税額控除等の特例適用
3.源泉所得税の納付
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出するまでは、すべての源泉所得税を翌月10日までに納付する必要があります。納付漏れにご注意ください。
(2020/2/3 T.K)
2019年12月7日 13:00
社長さんが会長さんになった際に退職金を支払うことがあると思います(分掌変更による退職金の支払)。ただ、退職金を支払う際は、“その役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められること”が必要です(法人税法基本通達9-2-32)。出社の頻度だけでなく、取引先との接待、金融機関や顧問税理士等との面談等から、各種議事録やHP等の会社組織図の記載、営業日誌や稟議書の決済欄、代表取締役時の名刺等の形式的な部分であっても気にする必要が出てきます。退職金を支払う際には、金額だけでなくその後の会社との関わり方も大事になってくるかもしれません。
(2019/12/7 I.K)
2019年12月7日 13:00
2013年12月の発表から早6年。経営者による個人保証はどうなっているでしょうか?東京信用保証協会は、下記のような要件が将来に亘って充足すると見込まれるときは、保証契約の必要性について検討することとしています。
①法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
②法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
③法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
④法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
⑤経営者等から十分な物的担保の提供がある。
なかなか経営者保証について動きのない場合は、金融機関側からの視点に立って検討してみることもよいかもしれません。
(2019/12/7 I.K)